それに応えるかのように、巷では様々なマネジメントスキルが提示され、そして忘れ去られていきます。ここ数年の傾向といえば、例えば「短所でなく長所に着目する」でしょうか。
これを、相手の良いところを見つけて褒めること、いわゆるポジティブ思考やプラス思考、楽観主義や性善説と捉えている人達も多いようです。
それを決定する者はだれ?
しかしここで考えてみたいのですが、経営者やリーダーは部下のある側面を見て、それを「良いところ」だと、なぜ決定することができるのでしょうか?
恐らく、自分が成功してきたこと、組織として常識であること、はたまた社会的に良いとされていることに基づいて、良い/悪いを判断しているケースが多いのではないかと思われます。
しかし、現代は自分が成功してきたこと、組織として常識であること、社会的に良いとされていることに基づいて考え、実行するだけではビジネスの成功を手にすることは難しい時代であり、それは部下のマネジメントにおいても同様です。
下心まるだしの所作
具体例を挙げて考えてみれば、「相手の良いところを見つけておだてる」あるいは「相手の気分を良くするために褒める」をセールスと顧客の関係に置き換えれば、それは相手にとって下心丸出しの所作にしか映らないでしょう。
組織の中でも同様で、たとえ長所というものが何であるか決まっていたとしても、長所にフォーカスするだけでは前述の通り「下心丸出しの所作」になりかねません。
なぜ「セールスにおける売り手と顧客の関係」と「組織マネジメントにおける上司部下の関係」を比較できるかと言えば、現代が「労働者の時代から消費者の時代」への移行が加速度的に進んでいる時代だからです。
情報あふれる現代消費社会では、付け焼き刃の対応は簡単に見抜かれます。
消費社会を生きるために大事なこと
そして、消費社会に関する考察は本論から外れるので詳細は省きますが、消費社会を前提にすると、長所と短所を見る視点も流動的になります。
何が長所で何が短所かを常識的な枠組みで捉えている限り、変化する時代でビジネスの成功につなげることは難しいでしょう。
移り変わりの早い消費社会において、ビジネスに本質的に必要なのは差異(ほかとの違い)であり、常識的な枠組みでのマネジメントによって人を統制していけば、当然そこから生み出されるビジネスも常識的なものになるのは想像に難くありません。
言い換えれば、他者(今回で言えば部下)のあり方を、経営者やリーダーが今までの常識や主観で「理解している」と思っていること自体が、組織マネジメント上の問題を生み出してだけでなく、ビジネス全体の問題を生み出していると言えます。
この問題に向き合う方法
その問題に向き合う方法は2つ。
- 流行りのマネジメントスキルを片っ端から試してみる
- その問題を生み出している自分の主観や、他者のあり方を規定している世界のあり方自体に目を向ける
私は後者をお勧めするのですが、その理由は経営者やリーダーにとって、組織のマネジメントは役割かもしれませんが、目的ではないためです。
目の前の流行りの言説を追い続け、本質的ではない問題にいちいち振り回されることは、本来の目的を見失いかねない行為です。
一方で「目の前の流行りの言説にいち早く対応した」という実績によって評価される組織がこの世に一定数存在することも知っていますので、現実的には、自分が置かれている社会構造・組織構造を見抜けるかで、あなたの「結果」が決定されることになります。
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